訓読みと同語異語判別

さっきの「訊く」の話関連というか、もうちょっと違う話というか。


「漢字の訓読みに正解はありません」というのは本当にそのとおりなんだけれど、その一方で、漢字の使い分けによって意味を分けるというのも厳然としてあり、その境界が、その文章の目的(媒体)や書き手(人)によって異なるために、悩ましいことになるわけです*1



いくつか例を挙げて考えてみたいと思います。


「あげる」の表記はいろいろあります。「上げる」「挙げる」「揚げる」…
意味的に「上げる」の派生といった感じですが、「代表的なものを〜」といったら「挙げる」、「油で〜」といったら「揚げる」ですよね。この辺は慣用的な使い分けがある、といったところです。


それに対して、「あずかる」を「預かる」「与る」と書きます。
この中で「与る」は「〜にあずかる」専用の表記であって、「(人)から(物)をあずかる」場合には使えません。つまり、文法的に「預かる」と「与る」は別物であって、いわゆる同音異義語(同訓異字)とは言いにくいものになります。私はいわゆる慣用的な使い分けとは別の次元であって、こういうものに関しては漢字の使い分けも必須になると考えています。

*1:例えば私は「「伺う」の「伺」にも "hear" や "ask" の意味はない」と思うので、「意見をうかがう」「(場所)に伺う」「様子を窺う」と書き分けますが、この辺は本当に人それぞれです